スポーツと子どもの成長を研究する中で、ふと気づいたことがあります。「子どもたちが思い切り体を動かせる環境って、実は私たち大人にしか作れないのでは?」
聖カタリナ大学で准教授を務める大城卓也(おおしろ たくや)です。日々、未来の体育教師となる学生たちと向き合う中で、この思いは確信へと変わっていきました。
実際、研究の中で芝生の園庭で遊ぶ子どもたちの運動能力が、土の園庭よりも高いことが明らかになりました。
転んでも痛くない芝生の安心感が、子どもたちを大胆にし、運動量を自然と増やしていたのです。
でも、課題もあります。天然芝には手入れや維持管理の負担が大きく、現場の先生や保護者の方々にとっては難しい選択になることも…。
「芝生が広がれば、もっと多くの子どもたちが自由に、のびのびと成長できるはず。」
芝生の上で輝く子どもたちの未来
「園庭を芝生にしただけで、こんなにも変わるの?」
ある研究データと出会った時の衝撃を今でも覚えています。芝生の園庭で遊んだ子どもたちは、土の園庭で過ごした子どもたちと比べて、明らかに運動能力が高かったのです。
なぜでしょうか?答えは意外とシンプルでした。芝生の上なら転んでも痛くない。その安心感が、子どもたちの動きをダイナミックにし、自然と運動量を増やしていったのです。
実は日本では30年以上前から、学校のグラウンドを芝生化する動きがありました。事故率の低下も確認され、その効果は実証済み。でも、なぜか教育現場ではなかなか広がっていきません。
理想と現実の狭間で
「芝生化っていいことずくめじゃない?」
そう思われるかもしれません。実は私もそう考えていました。でも、現場には現場の事情があったのです。
天然芝には「維持管理」という大きな課題があります。養生、雑草対策、日々の手入れ…。プロのグラウンドキーパーがいるスポーツ施設ならまだしも、幼稚園や保育園ではどうでしょう?
その負担のほとんどは、すでに多忙を極める先生方や保護者の肩にのしかかります。「少しでも管理を楽にしたい」という思いから、子どもたちの遊び場に除草剤を撒かざるを得ないケースも。さらに、芝生を育てるための「立ち入り禁止区域」まで作らなければならない。
子どもたちのために始めた芝生化が、逆に子どもたちの活動を制限してしまう―。この皮肉な現実に、多くの教育現場が躊躇しているのです。
希望は新しい選択肢の中に
それでも、私は諦めたくありません。子どもたちの運動能力の差が、時として自信の差につながっていく現実を見てきたからです。「芝生の園庭があれば、もっと多くの子が伸び伸びと体を動かせるはず」。その思いは今も変わりません。
実際、この課題に一つの解決策を見出した学校や園もあります。それが「人工芝」という選択肢です。次回は、この人工芝が教育現場にもたらす可能性について、詳しくお話ししていきたいと思います。
大城 卓也(おおしろ たくや)
1992年4月13日沖縄県出身。聖カタリナ大学准教授(健康スポーツ学科)。
8歳で野球を始め沖縄尚学高校、順天堂大学へ進学。大学では保健体育教員免許を取得。硬式野球部に所属し3年次に監督としてリーグ優勝。大学院ではスポーツ組織・マネジメントの領域から人工芝の抱え課題に着目。
2018年聖カタリナ大学に着任しスポーツビジネスやマーケティングの講義を担当。硬式野球部の創部に携わり、1年で四国地区1部リーグ昇格に貢献。オールスター戦コーチにも選出。現在、地域の高校野球部での指導や研究活動を通じ、地域還元に尽力している。
【参考文献】
1. 篠塚脩(2009):「学校施設の芝生化について」,芝草研究,38,1,pp41-44.
2. 中島弘毅、大窄貴史ら(2012):「園庭環境の違いが幼児の身体活動量と運動能力に及ぼす影響-園庭の芝生化に着目して-」,松本大学研究紀要,10,pp185-195.
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